悔しいじゃないか!
食堂へ向かう生徒達でごった返す廊下。
いったいこの学校のどこに
こんな沢山の生徒がおさまっていたんだろうと思う。
その溢れる人の中で、
もしかしたらと思って目を凝らしてしまう、
馬鹿な俺。
もう癖になってしまっているほど自然に探してしまうんだ。
会いたくないのに、
会いたいあの人。
偶然に見つけたあの人は
俺達のグループとは逆向きに、食堂に背を向けて歩いていた。
すれ違う女の子達に名前を呼ばれて手を振ったり、小突かれておどけてみたり。
きっとこの前みたいに、
挨拶しても俺には気づかないのだろう。
あの人が俺の事を、
なんとも思ってないのは知ってる。
知ってるんだ。
でも、なんだか。
目をそらすこともなく、
下を向くこともなく、
あの人なんて全然目に入っていない、
友達の話に夢中、
の振りをして
あ、今すれ違った。
学年も階も全然違って会うことなんてめったにない。
こうやってすれ違うのはものすごいチャンスなのに。
何で俺はいつもこんなつまらない意地を張っているんだろう。
あの人の視界に入りたいのに、自分から飛び込むことなんて出来ない。
だって悔しいじゃないか!
俺ばっかり必死みたいで。
かわいげがないなんて自分で分かってるけど、
それしか出来ないんだ。
少し歩調を緩めて、友人達からそっと離れる。
誰にも気付かれることなくはぐれて、
後ろを振り返った。
背中だけでも見ようと思ったあの人はもういなくて、
誰にも気付かれないようにため息を落とした。
「おーい、ツ・ユ・キ」
後ろからの声に振り向くと、
え、
うわっ!
反射的にあとずさる、が、
手首を掴まれた、逃げられない!
そのままぐっと引き寄せられて
あの人の顔が目の前に来た。
きてしまった。
「なんで無視するんだよ。
寂しいじゃないか!」
にっこり笑われると、
頬が熱くなる。
俺は堪えられなくなって、
思いっきり顔を背けた。
だって、
「悔しいじゃないですか!!」