爆発前のカウントダウンみたいに
拍を打ち鳴らし、視界をぶれさせ、手を震わせて
耐えられない
俺の心臓は、今にも


B L A S T ! !




「うわっ!!びっくりしたー・・・どうしたん?ツユキ?」
一瞬ぽかんとした後
耳まで赤くして俺の背中から慌てて離れるツユキ。
わたわたしながら逃げようとする手を引きすっぽりと抱き込む。

逃げられない絶対的な身長差で抱きしめて
極めつけに耳元で優しくささやく言葉は
「・・・・つかまえた」
さらに赤くなったツユキに
旗をあげるかわりに白いため息をつかせた。



あぁ、もうどうしたんだろう俺。
いつもいつも俺の部屋で一緒にご飯食べて、寝て、喋って
こんな笑顔だって毎日見てるのに。
蜂散さんの一つ一つの仕草にうるさいくらいどきどきしてる。
今だって、ほら。
聞こえるはずのない鼓動が体中に響いて
こんな大きな音だったら、蜂散さんにばれてしまう。
恥ずかしくて口に出せなくて必死に隠してる
大好きって気持ちが。


「おーい、ツーユーキー。本当に大丈夫か?
そんな可愛い顔でぼぉっとしてると、お兄さん襲っちゃうよ?」
両頬をつままれて引っ張られる。
「白くてやわらかくてすべすベvv
 味見したいな、舐めていい?」
「うぁ・・・んぅっ、ちょ、ちょっとやめてください!!」
「あ、今の声良い。喘いでるみたいだった。もっかい言ってくんない?
 それにそういう風に抵抗されるとちょっとそそる」
「あ、喘いでなんかいません!
 もう離してください!!エロい、変態!」
必死に手を振りはらうと、不満げに蜂散さんは俺の腰に手をまわしたけど
すぐに意地悪そうに笑った。
腰の触り方が絶対にエロい!

抗議するために蜂散さんに目を向けたのに
何を勘違いしたのかそっと唇を重ねられた。


背骨を駆け上がる喜びと
その後体中に広がる甘い痺れ。
どんどんと深くなるキスは思考を止めて
言葉にできない思いを伝え合うには十分だと思った。


「本当にどうした、ツユキ。熱でもあるか?
 いきなり抱きついてきたり、俺の顔に見惚れたりさ」
 嬉しいけどね、心配だよ
眼鏡の奥で蜂散さんの目が俺を映して
またどきりと鼓動がはねた。



夕方バイトから帰った蜂散さんは
めんどくせぇな、なんて言いながら眼鏡をかけてローテーブルに大学の宿題を広げた。
俺がコーヒーを出して邪魔にならないように、でも近くに座ったのは
真剣な顔をした蜂散さんを見ていたかったから。
蜂散さんには珍しいきりりとした顔や
分厚い本をめくりながら、時折ずれた眼鏡を直して、ペンを走らせている
目線に、指先に、横顔に
抑えきれないほどの、衝動。
俺の記憶の最後は大きな鼓動で締めくくられていて。
なんて恥ずかしい。
気付いたら大きな背中に抱きついていたんだ。


じっと心配そうに顔を覗き込んでくる
蜂散さんにきっと赤いであろう頬を見られたくなくて
ぎゅっと抱きついて、大丈夫です、と呟いた。


そういえば、あの時
夕焼けに染まった屋上で思いを告げられたあの時に。
はじめてみた蜂散さんの真剣。
拒否しても離してなんかやらないと、
頷くまで何度も言ってやると強く主張する目にとらえられて
俺は慌てて目をそらしてしまったけど
本当はすごく嬉しかった。
泣いてしまうほど。


でも結局そのまま
蜂散さんの思いはたくさんもらったのに
俺はなかなか言えないままでいる。
臆病な俺は恥ずかしいと顔を隠し
見つめれば見つめ返される強さに負けて
すっと逃げてきた。

伝えたい。
あなただから好きだってことを。
知りたい。
あなたへの思いがどれほど伝わるかってことを。
確かめたい。
あなたじゃなくちゃ駄目だってことを。

いつもは恥ずかしくて怖くて
簡単に口になんてできないけど、
俺を好きでいてくれる気持ちが伝わるから、
あったかくて大きな手が髪を撫でるだけで分かるから、
だから大丈夫、自信を持って思いっきり大きく
爆発するほど溜め込んだ、好きを
鼓動をカウントダウンに!





B L A S T ! !





「俺、蜂散さんのこと…す、好き、です!」





/fin.