「変だな」

ラフカは顔をしかめてつぶやいた
せっかくのクリスマス、意を決して温かいこたつから這い出た彼が完全防備で外に出たというのに、
雪が、雪が全く降っていないのである
日もとっぷり暮れた午後5時30分、街には皮肉なビル風が吹き荒れて空気は凍えるように寒い、それなのに

「なんで?雪どこ行った?雪合戦とか、雪だるまとか、あれ、ねェなんで?」
「雪なんか降るわけないんだよ昨日のニュースでホワイトクリスマスは無理でしょうって言ってたのラフカ知らないの」
「えっ!?何それ聞いてない!俺そんなの聞いてねェよ!!だってクリスマスっつったら普通外だろ!?外で遊びまわるだろうが!!」
「あーやだやだクリスマスクリスマスって何それ?むしゃくしゃするちょっと顔殴らせて」
「やめろロミーノなにすんだ!あっちいけこの野郎!!」

理不尽すぎる理由で掴みかかってきたロミーノを慌てて引きはがしてラフカは顔をゆがめる、
ホワイトクリスマスじゃなけりゃ、クリスマスなんてのは楽しさ半減だ
もちろんこれはラフカの持論だけれど、それぐらいホワイトクリスマスのホワイト部分は大きい
ラフカの浮かない顔がおもしろいのかロミーノはけたけたと笑い出すし
もはや溜息一つじゃ数が足りない

「まぁ、あれだ、ホワイトクリスマスは諦めてさ!そんなことより駅にでも行ってがっかりしてる残念なカップルの顔でも拝むとしようよ」

笑顔のロミーノが提案した酷いアイデアにラフカは思い切り首を振った
それでも彼は俺は行くけどね、なんてけたたましく笑いながらくるりと背を向けるから、
煌びやかなイルミネーションが見れただけでもよしとしよう、
ホワイトクリスマスお構いなしのカップルと眩しい程のイルミネーションで飾り立てられた大通りをゆっくり鑑賞する間もないまま
ラフカは諦めたように本日何度目かのため息を冷たい地面に落っことして
さっそく近くのカップルに狙いを定めようとずかずかと歩いて行くロミーノの背中を追った

どやさま宅ロミーノくんとラフカくんお借りしました!