その日も綺麗な一面の銀世界
ふと足をとめたクロスに、聞き覚えのある声がかかる
「やあクロス」
「よう」
短い挨拶ののちDaddyはクロスに微笑んだ
ゆったりした動きで彼の大きなしっぽが揺れた
「お前さんが来るのを待ってたんだ」
首にマフラーを巻いて、寒そうに肩をすくめる帽子屋の店主はゆっくりとそう呟いて笑うから
クロスはどんな顔をしたらいいのか分からずにすこし肩を上げて見せる
外は雪 一面の白
そんな中自分を待っていたというのだから、なにか特別な理由でもあるのだろうか
クロスはDaddyの抱えていた大きな箱を見てすぐさま言う、
「クリスマスプレゼント?サンタクロースを信じる歳じゃねーだろ、お互い」
クロスの声に一瞬キョトンとした表情を浮かべるDaddyがゆるりと笑う
「俺はサンタなんかじゃないよ、」
Daddyの吐いた息が白くなるその前にクロスの右手にそっと乗せられたのは小さな箱で
渡されると思っていた箱は彼の腕に抱えられたまま
そのギャップにクロスが思わず顔をしかめると
Daddyは小さく笑って言った
「誕生日プレゼントさ」
何年も前に聞いたっきりのその甘ったるい響きを聞くなりクロスは途端に顔が熱くなって、
あははと笑いだすDaddyに慌てて顔をそむける
それでもしっかり右手に乗せられたそれを放り投げることなんてできなくて
クロスはしかめっつらをうかべたまま、乱暴にそれをポケットに突っ込んだ
SETUNAさま宅KUROSUくんお借りしました!お誕生日おめでとう!