「遅い!!!!」

明らかに怒り心頭のお嬢様に僕は一瞬動揺した
外は雪、お嬢様の言うとおりの店でお嬢様の言う通りのケーキを買ってきて凍えそうな僕の目の前で
温かい部屋へと続くドアと僕の間に立ちふさがっているのは紛れもなくお嬢様本人で

「どうしてこんなに遅くなったの!?」

お嬢様、それはケーキ屋が混んでいたからです
予約も入れずにクリスマス当日に買いに行くなんて、それは遅くなって当然なんですお嬢様
ガチガチと歯が鳴りそうになるのを何とかこらえて僕はさも何事もないかのように平然と答えて見せる
ただし目線はドアの向こうで燃えている温かそうな暖炉にくぎづけだったけれど

「私今すぐケーキが食べたかったのよ!!」

怒り心頭なお嬢様の怒声、この時ばかりは僕も視線をやっとの思いで暖炉から引っぺがして
お嬢様の目を見つめた
目を細めて彼女は僕に噛みつくように文句を吐くけれど、
それだって彼女の愛情表現の一つだって言うことを僕は知っている
その証拠に、僕が帰ってきたときから彼女の右手にはずっとブランケットが握られているんだ

「凍えて寒そうね!あ、あやまるのならブランケットをかけて差し上げないこともなくてよ!!」

ちょっとだけ泳ぐ彼女の視線
無理してるなんてことはずっとそばにいた僕から見れば一目瞭然で
な、によ!!と噛みついてきた彼女の手を取ってふわりと僕は彼女の眼をまっすぐ見上げる

「申し訳ございませんでした、お嬢様」

お嬢様はそれからすぐに手を引っ込めて
冷たいから触らないでよ!!なんて暴言まで吐いて
僕に乱暴にブランケットを放り投げた後、それからやっとドアの取っ手を開けた

ころさま宅ロイヤルちゃんとゆうすけくんお借りしました!